連載 ニュースウォーク・56
「おむつ減らし」の視点
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.994-995
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902708
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このよらの いつかあけなむ
このよらの あけはなれなば
をみなきて ばりをあらはむ
ごひまろぴ あかしかねけり
ながきこのよを
越後地蔵堂の貞心尼のもとに,良寛のお命も心もとなし,と使いが来たのは天保元年(1830年)の師走も残り少ない日だった。書状の最後に良寛の歌「このよらの……」の写しが添えられていた。ばり(ふん尿)をたれ流し,いつかあけなむ(いつか明ける)夜が明けたなら,をみな(女中)が始末に来てくれるのを,眠れないまま待つ,という歌である。
老師と心通わせていた貞心尼は雪の峠を越えて出雲崎の庵に駆けつけ,翌年正月5日,74歳で亡くなる良寛の最期を看取った。良寛が貞心尼から受けた介護・看護については,病者の苦悩,人間の苦悩を歌ったこの作品とともに多くの研究がある。
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