特集 後輩を育てる
先輩がどう接すれば後輩は育つのか—後輩を育てる先輩,育てない先輩
津村 智恵子
1
1大阪府立看護短期大学
pp.810-815
発行日 1989年10月10日
Published Date 1989/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207824
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はじめに
最近の若い女性の多くは少産型の家族構成のなかで過干渉気味に育てられている。すなわち周囲が設定し,与えられた一定の枠内の生活である家庭生活,学校生活までは順調に過ごせるが,それを越えた枠のない社会人生活に入った途端,ささいな障害も乗り越えられず挫折し,逃避する。職業人としての挫折が各種の社会生活不適応シンドロームの若者を増やしていると文部省は警告している。早期にこの問題の芽を摘み,青年期に萌芽させないために文部省は先頃「挫折を自力で乗り越えられる子育て」の手引書を作成し,都道府県教育委員会を通じて教師と父兄に配布した。
文部省が青年期の社会病理現象として危惧する最近の若者群に当然のことながら,後輩の若い保健婦たちも属している。彼女たちは豊か過ぎるほどの物資に囲まれ,両親には箱入娘的に自ら努力しなくても,十分に与えられ育っている。これに比べ,私たち先輩保健婦は物資の不足がちな昭和20年から30年代の貧しい時代に育っている。両者の育ち方の違いや,価値感の差は大きい。これを乗り越えて,どう接すれば彼女たち後輩保健婦を専門職業人として一人前に育てられるのか,また,彼女たちが挫折したときに先輩保健婦としてどう対処すべきなのかを,私自身と周辺の保健婦の経験をまじえてここにまとめてみる。
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