特集 つゆと保健指導
つゆ時の老人の保健指導
内田 卿子
1
1聖ルカ病院
pp.25-28
発行日 1966年6月10日
Published Date 1966/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203664
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はじめに
つゆと聞くだけで,私どもの脳裏にあのうっとうしい.じめじめした何ともいえぬ抑圧された不快を,身体全体で感じるものである.健康な時にあっても何となく頭圧感や,気分がすぐれずイライラしたり,突発的に何かしてみたくなったり安静を欠きやすい状態になる.まして家庭で長いこと寝ている人びとにとって,寒い冬をのりこえ,春の息吹に気持を持ち直し,新緑のさわやかに燃える5月の美しさに希望の灯を持ったところに,押しかぶさってくるこの気候は日本の国の季節的な宿命とはいえ,何とか気持良く,この不快の時期をのり切りたいと願うのはだれしも同じ思いである.
家庭のなかに病人がいることは,今の社会状況のなかで,お世話することは手のいることであり,家族にとって重荷のことである.急性期なら病院での治療となるが,慢性化し,もうこれ以上の恢復が望めず長期間同様の状態が続けば,それぞれ専門の施設に移るか,家庭に帰り現状維持でこれ以上悪くしない線での生活が始まるわけである.成人病,老人病といわれているもので完全に社会復帰のできる状態になるのは多いとはいえない.時には何らかの症状を残しある者は半人前,ある者は1/3人前とし家庭で寝たり起きたりの生活になる.最悪の場合は寝た切りですべて他人の手をかりなければ何にもできない状態になる.
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