映画紹介
肉体の悪魔―Le Diable au Corps
X
pp.40
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200400
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この映画の原作者レイモン・ラディゲの名はおよそ文学を語るものにとつて忘れられないものであろう,1903年に生れ,17才でこの「肉体の悪魔」を発表し,20才で「ドルジェル伯の舞踏会」を書き上げた。あとはただ未刊の詩集と若干の雑文を残しただけで1923年に早くも世を去つたが,彼の最大の理解者であつたジヤン・コクトーの言葉をかりれば『最後まで滅茶苦茶に手取早く年令が進行してしまう物々しい人間』であつた。徹底的な心理小説を標榜した彼の作品は,とても10代の少年のものとは思われない豊かな想像力と老成した人間観察に満ちた文学史上の奇蹟というべきであろう
(物語)
1918年第一次大戦の休戦の鐘が鳴りひびくや全ヨーロツパはあげて歓喜に漲つた。だがその中にただ一人悲しみに打ち沈んでとぼとぼと街をゆくうち若い青年がいた。彼はパリ郊外の小さな家から出て来た葬列を見送ると,入れ違いに吸いこまれるようにその家に入つて行つた,寝台がポツンと置かれた部屋,鏡をみつめながら彼の往時の回想が始まる
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