和漢診療の実際・12
陽明病の治療について
寺澤 捷年
1
1富山医科薬科大学附属病院和漢診療部
pp.1410-1413
発行日 1986年12月1日
Published Date 1986/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921597
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今から13年ほど前の夏,私は東京学芸大学の登高会のOBとOGが組織した‘ヒンズークシュ学術踏査隊’に医師として加わり,約2か月間アフガニスタンのヒンズークシュ山脈に遠征したことがある.その時に一緒に参加した武田誠氏が医学書院の看護書籍の出版部で現在活躍中である.私がこうして連載を執筆させていただいているのも武田氏を通して,今は故人となられた吉見輝之氏と知己を得た結果である.
さて,そのアフガニスタンの首都カブールでは,わが隊は到着早々4人の下痢患者を出すという事態に見まわれた.カブールは砂漠の中の都市で,ともかく水が悪い.いちど沸騰させると硬水は軟水になると理科の教科書に出ているが,それは日本で通用することで,カブールの水は硬水も硬水,二次硬水というもので,沸騰させた湯ざましでも硬水のままなのである.つまり高濃度のミネラルウォーターで,硫酸・マグネシウム水の少々うすいものと思って下さるとよい.そこでスイカやブドウで渇をいやすが,結局は紅茶の類を飲まないとノドが渇いてしょうがない.なにしろ湿度が20%以下なのだ.やむを得ず毎日,色のついた硫酸マグネシウム水を飲むということになったのである.この硬水の摂取過多が引き金となって発熱を伴う下痢に襲われたのだった.
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