看護婦さんへの手紙
あつかいにくい患者
芥川 比呂志
pp.13
発行日 1965年1月1日
Published Date 1965/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913464
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ついこの間まで入院患者であった私が,あなたに手紙を書くのは,テレくさい気持がします。あなたは,あるときは院長の回診に立ち会う威厳のある老婦人であり,あるときは血沈の注射針を何度も刺しそこなうかわいらしい少女であり,またあるときは,患者の起居に目を光らす男まさりの中年の女性であり,そのどれもが,まちがいなくあなたなのですから,この手紙を書くのは,とてもむずかしいのです。
同様にあなたの目から見ると,患者というものはまことに多種多様な存在であるにちがいありません。老若男女,体質や気質のちがいはまことに千差万別で,集団検診のような場合をのぞけば,なかなかひとまとめにあつかうわけにはいかないはずです。
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