医学と看護4月のテーマ
尿路感染とその予防
岡本 重礼
1
1聖路加国際病院泌尿器科
pp.35-40
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912691
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I.尿路感染の概念
近年尿路感染が臨床上重要な課題として取り扱われるようになってきたことは周知の事実であるが,その理由はかつて治療上それほど問題にならなかった尿路感染が化学療法の普及に伴う細菌の耐性獲得,菌交代現象と相まって,きわめて難治な疾患となってきたことにある。
最近ではHost Parasite Relationshipという問題が広く論ぜられるようになってきた。すなわち,生体は元来感染防禦機構を有するものであるが,何らかの原因でこれがくずれると感染症として発病してくるというのである。尿路への細菌の侵入から尿路感染の発病までの過程では,特にこの理論で説明し得る場合が多い。例えば元来正常の尿は静菌作用を有し,また尿路の粘膜も細菌感染に対してはかなり強い抵抗を有するもので,実験的にも尿路に有毒な細菌を注入しても容易に感染症として発病しないことが証明されている。しかるに下部尿路に人為的に通過障害をつくり膀胱内に残尿を残すようにすると感染症として発病してくる。これはまさに宿主側の防禦機構の問題であり,感染を誘発したとみるべきである。尿路感染の患者には感染そのものが主病変であることもあるが,他の病変の合併症となっていることも意外に多い。これも宿主側の問題で,他の病気に罹患しているために防禦機構がくずれているとみなすべきである。
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