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インフルエンザ
美甘 義夫
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1傳研附屬醫院
pp.6-9
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906758
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昔から「かぜ」は萬病のもとといわれて重要視はされていたが,醫師が治療の對照としてとり上げることは尠かつた。否それどころか「かぜ」を治療するのは醫師の仕事でないとさえ考えられた時代がある。かぜ醫者という言葉がそれをよく現わしている。こんなことからかぜは専ら素人療治で癒るもののように思い込まれてきた。そして「かぜ」といわれる一連の呼吸器系統の病氣のうちで,このインフルエンザ(流行性感冒)が代表者であることも皆さんの御存知の通りである。スペインかぜ,イダリヤかぜなど世界的流行で有名な,インフルエンザもあつたし,日本の國内で色々な名前のかぜで呼ばれた,インフルエンザの國内的の流行もあつた。インフルエンザは流行性感胃と必ずしも同一ではないが,その最も大切な一つである。しかしインフルエンザは多數の住民が罹ることは他に類例がない病氣で,たとえ生きる死ぬの問題に當面することが少いにしろ,又特に醫師の治療を受けなくても家庭療治が安靜でもよく癒ることは間違いないとしても,極めて多數の人々が職場を休まなければならない點からみれば,國家經濟・公衆衞生の立場からは極めて重大な問題である。
そこでインフルエンザがどんな特徴をもつ病氣か,どんなときに生命の危險を伴うか,どんなように治療や看護をされなければならぬかを以下に述べてみよう。
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