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「人生に何を期待するか」から「人生は何を期待するのか」へ―それでも人生にイエスと言う
佐々木 智子
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.528-529
発行日 1995年5月1日
Published Date 1995/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904822
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いじめによる自殺が多発したり,自分の人生に対しての意味を見失いがちな現代において,絶対的な価値観と自らの体験に裏づけられたフランクルの「生きる意味」の再発見は,私たちの人生にもう一度意味づけを与えてくれる.
『夜と霧』(みすず書房,1961)というナチス時代のアウシュビッツ収容所での生々しい体験と写真でつづられた本は日本でも有名であり,誰でも一度はその写真を見て衝撃を受けたことがあると思う.しかし,著者ヴィクトール・フランクルは「夜と霧」でナチスの犯罪を克明に記録をしてはいるが,それだけではなく,その極限の世界にありながらも人としての尊厳を見失わずに生還した,自らの実践をも記録している.本書は,その収容所から解放された次の年に,ウィーンの市民大学でフランクルが行なった3つの連続講義を収めたものであり,平易な言葉で例をあげ,非常に分かりやすく語られており,フランクルの難しい理論の解説書ともなりうるのではないかと思う.
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