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影響力バツグンのすてきなメディア—マンガにみる看護
杉山 克己
1
1東京大学医学部保健社会学科
pp.78-79
発行日 1995年1月1日
Published Date 1995/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904728
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先頃,大江健三郎さんのノーベル文学賞受賞が話題になりましたが,「マンガもノーベル文学賞の対象に」と考える人は少ないと思います.しかし,大江さんの小説と比べればマンガはよく読まれています.当然,その分,影響も大きいと思うのです,「看護婦が患者の疾病からの回復に,何らかの役割があるとは考えられていますが,具体的なイメージで理解されてはおりません」.これは,意識障害患者の意識回復に挑んだ札幌麻生脳神経外科看護チームのドキュメントをコミック化した『きみの思いを声にして!』に同看護部長がよせた解説からの引用です.同様にマンガの影響力も具体的には考えられてきませんでした.しかし,『動物のお医者さん』というマンガはハスキー犬を日本中に流行らせ,獣医志望者が増えたのに一役買ったと聞きます.
今回,この原稿のために,手持ちの看護職が主人公のマンガを読み返すと23冊になりました.読み通すのに丸3日もかかりましたが,これはマンガのいいところです.TVや映画では「自分のテンポ」なんてありません.さらに,電車やバスの中でも読めて,しかも分かりやすく,感情の機微を表現することもできれば図入りで詳細な情報を伝えることもできます.フリガナをふれば子供や外国人にも読みやすい.こんなすてきなメディアがどれほどあるでしょう?
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