今月のニュース診断
未成年者の医療上の自己決定権 その2—人工妊娠中絶の意思決定と手術の同意
斎藤 有紀子
1
1北里大学医学原論研究部門 法哲学・生命倫理
pp.740-741
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902476
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日母の提言
平威12年5月1日号の日母医報に「女性の権利を配慮した母体保護法改正の問題点—多胎減数手術を含む」という提言が掲載された。日本母性保護産婦人科医会(日母)が,母体保護法改正案を検討していることは,これまで何度も紹介してきたが,今回最終案が公表されたのを機に,あらためてテーマに則して論じてみたい。妊娠・出産の思想・制度の根幹に関わる母体保護法をめぐる動きは,やはり丁寧に読み込んでいく必要を感じるからだ。
はじめに日母案の改訂の流れを簡単に振り返っておこう。まず97年3月に法制検討委員会で胎児条項導入が検討されていることか新聞報道から明らかとなった(本誌51巻5号本欄)。その後,法制検討委員会は胎児条項を盛り込んだ答申案を会長に提出したが,99年8月に公表された第一次案(日母医報平成11年8月1日号付録)では胎児条項が削除され,妊娠12週未満で女性の自己決定のみによる中絶を認めたこと,多胎減数手術容認,経済条項が廃止され,代わりに精神的理由,社会的理由の文言・条項が加わったことなどが注目された(本誌54巻4号本欄)。第一次案公表後,日母はインターネットで会員の内外から意見を募り,昨年11月には公聴会を開催。さらに法制検討委員会と倫理委員会で修正をかけたのちに今回の第二次案をまとめ,常務理事会,理事会,3月の定例代議員会の了承を経て,正式に「日母提言」として公表した。
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