Medical Scope
妊婦子宮頸管粘液中の顆粒球エラスターゼ測定
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.1081
発行日 1997年12月25日
Published Date 1997/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901847
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早産の原因は腟,子宮頸管から上行した感染の結果である絨毛羊膜炎(CAM:chorioamnionitis)であることは皆さんもよく知っている通りです。ですから,この絨毛羊膜炎が発症したということをごく初期のうちに診断できるなら治療も早く始められることになり,あるいは早産をくい止めることができるのではないかと考えられてきました。そこで何種類かの検査法や診断法が開発されたことはこの欄でも述べてきた通りです。胎児性ファイブロネクチンを子宮頸管内から検出する方法が最近ではもっとも有益だろうとされていましたが,もうひとつの話題が登場してきました。それが「顆粒球エラスターゼ」という物質です。
顆粒球エラスターゼという物質は,ヒトに細菌感染が起こると白血球の好中球から放出される酵素で,細菌感染により組織の炎症化が進むなかで組織を分解させる働きをするのです。したがって,妊婦の頸管に細菌感染が起こり,頸管炎が発症すると頸管内の好中球はこの顆粒球エラスターゼを放出してきます。こうして放出された顆粒球エラスターゼは,子宮頸管のコラーゲンという線維を分解して子宮頸管をやわらかくしてしまい,ついには大きく開大させてしまいます。そうすれば子宮内容は外へ出てくる結果となり,早産につながってしまいます。
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