クローズ・アップ
維新の町 萩に助産婦五代を輩出した斉藤助産院
宇津木 利征
,
本誌
pp.637
発行日 1987年8月25日
Published Date 1987/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207189
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山口県・萩は120年前,明治維新に原動力となる人物を育んだ町である.山陰のおだやかなこの地のどこに,激しい気骨を生む要素があるのか不思議だが,気骨は維新の男たちだけの専有物ではない.150年間,5代にわたって助産婦をつづける斉藤助産院の女性たちの底力は,維新後の志士が栄達を求めたのとは違って実にすがすがしい.フサ(文政11年生)—ミチ(文久2年生)—トラ(明治24年生)—美恵(大正12年生)—雅代(昭和24年生)と脈々と伝わる助産婦魂は,助産の技術が少々様変りをしても,真髄において変ることがないだろう.
斉藤助産院の現在は,美恵氏が中心となって分娩介助にあたり,雅代氏は新生児訪問,母乳相談も担当している.トラ氏は今や萩の名士だが,長男を背にして山口市まで勉強に行き,産婆の免許を取得したがんばり女性である.しかし残念なことに,この6月半ばに96才でほぼ現役に近いまま急逝された.あと10年がたつ頃には,6代め助産婦の誕生も見込まれそうである.
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