特集 退院指導;なにをするのか
産後順調に母親になる過程への指導—助産婦としての留意点
今関 節子
1
1群馬大学医療技術短期大学部助産特別専攻科
pp.569-575
発行日 1987年7月25日
Published Date 1987/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207174
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はじめに
出産により,褥婦とその家族は著しく大きな変化を体験することになる。褥婦にとって最も大きな変化は,妻または1児の母親であったという立場から,新たに母親になる,または2児の母親になるという役割の拡大によってもたらされる。女性にとって母親になるということは,心理的に大きなストレスをともなうものでもある。出産によって子どもをもつということは,後戻りができない見切り発車的状況のうちに,妻から母親への役割転換が進められ,積極的に引き受けざるを得ない事態に直面することなのである。そして母親になるということは,育児という課題もまた引き受けることなのである。育児は,今まで自身と家族のために行なってきた家事などの日常的活動の上に,さらに"仕事"が負荷されることであり,その手順と方法を覚え,実施することは心身にとって相当なエネルギーを要する。すなわち褥婦にとって多くの役割が増えることを意味している。
その結果,夫と妻の間で今までお互いのために使っていた時間とエネルギーが育児の方へ注がれ,欲求不満が生じてくることもある。その他,新生児という新たなメンバーを迎えたことにより,家族内の人間関係の調整も必要になってくるし,経済的負担も増大してくる。
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