特集 開業助産婦の現在
ハウトゥ開業
鈴木 秀子
1
1のぞみ助産院
pp.1059-1063
発行日 1986年12月25日
Published Date 1986/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207019
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はじめに
お産は本来健康的な生物体の営みなのに,病院でくり返されるお産はなぜ異常が多いのだろう。長い病院助産婦としての生活のなかで,私はつねに自問自答していました。他科との接点を求めるための苦労,医療チームとして当然おこってくる画一化に伴う悩み,病院だから病気の人が沢山いるなかで健康な母子を隔離しなければならず,そのことで多大な不便をかけている現実,本来家族から喜んで迎えられる母子が管理の対象となるため,家族を締め出し,母と子を切り離す。こんなパターンで進められる子産み子育てが誰に幸福をもたらすのだろうか,と何ともいえない矛盾を感じたものです。この新しい命を誰が一番喜んで見守り,迎えてくれるのだろうか,自分だったらどうだろう?安全らしいということの代償にもっと大切なものを失っている。女としても,直接生命の誕生に接している立場からも,事務的で画一化を余儀なくされる病院型分娩には納得できないものがありました。そこで,健康的な生活体の営みとして,もっと違った角度からお産を考えてみたいと痛感し,試行錯誤の末,自分で実践してみようと思いつき開業に踏み切りました。
私自身,第一子分娩時には,あまりにも勉強不足で,"失敗お産"をしてしまいました。今のような上手な呼吸法やリラックス法の練習もなく,腹式深呼吸法にたよりながら1人でとり組んだお産は,結局,胎児切迫仮死で吸引器にたよることになりました。
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