助産婦事典
わが国におけるベビーベッドの歴史的考察
加藤 翠
1
1日本女子大学・児童学科
pp.44-48
発行日 1979年1月25日
Published Date 1979/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205490
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1.はじめに
睡眠は人生の1/3を占めるが,乳児期とくに人生のごくはじめの時期には,生活の大部分を占め,生活そのものといっても過言ではない。B. Spockは彼の育児書1)の中で,出生前に準備するもののトップに,a place to sleepをあげているのである。しかし,わが国の住宅はこれまで畳の部屋が主体であったから,寝る場所の問題は欧米のそれとは根本的に違った次元にあったのである。
第二次大戦後,とくに近年,乳児を寝かせるためにベビーベッドを用意する家庭がふえ,乳児院や保育所などでは,こぞってこれを使用するようになり,1歳を過ぎても寝る時刻になると,檻のような箱の中に入れられている。私は昭和42年に東京都の「乳児保育内容に関する研究」のグループに加わり,0歳児保育を行っていた14の保育所を調査したことがあるが2),当時は認可されているこれらの施設でさえ,乳児1名にベッド1台が用意されていたのは8か所で,残りの6か所は数が不足し,またこれらの施設のベッドは同一保育所内でもサイズや材質などバラバラな物が使われていたり,施設の間の統一は見事なまでに無いことを知ったわけである。1台のベッドを保育児が共用している,こんな状態こそ一刻も早く改善されなくてはと,当時私も考えたものであった。
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