連載 産科免疫学十二話・7
免疫療法の偉大な勝利—B型肝炎の母児感染
梅咲 直彦
1
1大阪市立大学医学部産婦人科
pp.960-966
発行日 1992年11月25日
Published Date 1992/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900692
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はじめに
先月号でエイズの解説をしました。この病気は発病すると数年後に確実に死に至るため非常に恐れられています。しかし肝炎ウイルスによる感染,特にB型やC型肝炎ウイルスの感染については,その恐ろしさはあまり認識されていないようです。しかしこれらの感染が起こると10〜20年後に非常に高い確率で肝硬変,また肝癌になり死に至ります。
1964年,当時アメリカの日本大使であったライシャワー氏が暴漢に襲われて重傷を被った際,日本人からの輸血で一命を取りとめました。昔でしたらこのような事件がきっかけとなり戦争が起こっていたかもしれません。しかし親日家であった大使は,記者会見で「わたしもこれで日本人になれました」と優しく日本人の罪を許してくれました。しかしその輸血がもとで血清肝炎(当時非A非B肝炎と診断されていました)になり,後に肝硬変,さらに肝癌で1989年に亡くなりました。肝炎発症から25年後です。この例でもわかるように,ウイルス性肝炎も死に至る病気であり,エイズとの大きな違いはありません。
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