特別企画 若者と性教育と母子保健と
ケース・レポートを読んで
産婦人科医の立場から
若年妊娠と医療との対応
広井 正彦
1
1山形大学医学部産科婦人科学教室
pp.38-41
発行日 1977年1月25日
Published Date 1977/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205156
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ローカリティに根ざした高井さんの活動
この事例報告は「16歳の出産」を取り扱った高井助産婦さんの苦闘の記録である。中学を卒業して間もない少女が,性の知識も,妊娠・分娩・育児の知識もない状態で妊娠してしまい,人工妊娠中絶をせずに婚姻を結ぶように説得させ実現させた。その後は自宅で未熟児を早産し,この新生児を抱きかかえて8キロ離れた病院につれて行き,無事生育させることに成功した。退院後1月の寒い冬の日,児の具合が悪いとの連絡で訪問すると,戸をしめきった部屋でストーブの熱でムツとする中で,厚いふとんに包まれて赤ん坊は元気を消失していた。脱水とチアノーゼにより赤ん坊を再入院させるとともに,母親に育児法の指導をするために付添入院をさせたが,母親は働かなければ食べていけないという経済上の理由で,赤ちゃんを連れて無断で退院してしまった。そこで,町の保健婦さんの暖かい理解と支援をえて,助産婦としての職業意識に燃えて,自宅訪問をしながら,母親となった少女に育児の指導を行い,生まれた児はすくすくと育って行った。そして1年後にバイバイと小さな手を振ってあいさつしてくれる子供と,元気に幸福そうに過ごしている母親に接し,助産婦としての誇りと生きがいを感じている。
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