連載 海外の産科医療事情
母乳栄養について
唯 正一
1
1唯産婦人科
pp.75
発行日 1972年3月1日
Published Date 1972/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204342
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わが国ではPCB,BHCなど母乳栄養にも解決されるべき重要問題が残されていますが,母乳の重要性を否定する識者は少いはずです。産科看護でも母乳栄養の確立がその重要な一部門であることは言うまでもありません。米国の看護婦がどんな理念でその点のcareを行なっているか今回はB. A. Countrymanの論文をご紹介してみたいと思います。 母乳哺育を行なう母親は妊娠中の種々の指導に加えて分娩直後から人工栄養群とは母児とともにぜんぜん異った看護が行なおれねばなりません。とくに重要なのは最初の哺乳です。食道奇形の存在への配慮から生後6〜12時間に,まず糖液水を与えるのが今日一般的になっています。
しかし初乳は刺激性がなく,他の液体を与える必要はありません。しかも初乳はV,A,E,蛋白が豊富で免疫因子をふくんでおり,抗体は分娩後最初の12時間に最高に見出されます。新生児の吸啜反射は出生直後から強く授乳開始は生後1時間内に行なうべきです。また初乳の緩下作用は胎便を早期に排出し児を空腹にし吸啜力をいっそう増強します。さらに胎便の早期排出は便中に存在する破壊された赤血球からできるビリルビンの腸管からの吸収を減少させます。4時間毎の時間哺乳は乳汁潮来をおくらせ,時間までに潮来がおこると母親を大変不快にします。
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