婦人ジャーナル
30代の女性たち
山主 敏子
pp.57
発行日 1971年9月1日
Published Date 1971/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204211
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花の盛りは短くてという言葉がある。いまが盛りだ,美しいなと眺めていると,アッという間に花は散ってしまう。人間も同じことでうかうかしているとすぐ年をとってしまいますよという意味であろう。特にこれは女性に関していわれたものであるらしい。男性に関しては,30代はまだ青年,40代は働き盛り,50代は貫録が出てきたなどという。まことに息が長い生き方だが,実際の寿命に平均して女性のほうがたしか6年ほども長いのだから不思議だ。
女性自身もそうした言葉にまどわされて,本心では決してそう思ってもいないのに,30近くになると,もうおバアさんですからなどといってみる。昔の男性はむやみに女性を早く老けさせたかったらしく,芸妓は25歳を過ぎれば"ばばあ芸者"と残酷な呼び方をされ,大奥では将軍の愛妾は30歳になると"おしとねすべり"といって寝所にはべることはできなかった。女房と畳は新しいほどいいなどという男性の身勝手な考え方は長い年月の間にいつのまにか女性にも感染していて,いまでも誰が考えたのか女性の結婚適齢期は25歳までなどといって,娘が25歳を過ぎると親もあわてだすし,また娘のほうもあせりが出て,30歳を過ぎたらガックリきて,やがてあきらめの心境に入るといったひとが多い。このように独身女性の30歳に世間の風当りは強いが,既婚女性に関してはどうだろうか?
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