北から南から
この道一筋 母子の健康・新赤ちゃん体操から
pp.64
発行日 1970年2月1日
Published Date 1970/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203891
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この道一筋 〔滋賀日日新聞 44.11.3〕
邑川かのさん(83)
助産婦ひとすじ60年.83歳の邑川さんはいまなお愛用の自転車に乗って五個荘町のすみずみまで新生児指導に走り回っている.20歳のとき日赤にはいって以来,県の助産婦検定試験に合格地元の病院に6年間勤めたあと自宅で開業,かたわら看護婦の養成に力を入れた.甲良町尼子・故川村きりさんらとともに運動して県助産婦会をつくった.いわば湖国助産婦界の草分けのひとりである.42年には厚生大臣表彰も受けた.
「60年間に自分の手で取り上げた赤ん坊は1万人ぐらいもいるでしょうか.苦しい思い出といえば戦時中,生活に困っていた家庭で,赤ちゃんが生まれたときは,つい同情してしまってミルク代をふとんの下へそっと入れたり,知り合いから赤ちゃんの着物をもらってきてあげたものです.最近の母親は衛生,教育面ともに育て方は上手になったが,子供に対するきびしさに欠けますね」とちょっぴり苦言.「でもね,新しい生命が元気よくすくすく育ってもらうために死ぬまで役に立ちたいです」と若々しい表情にあふれていた.
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