産婦人科における精神身体医学・1
女性と精神身体医学(その1)
長谷川 直義
1
1東北大学医学部産婦人科学
pp.15-18
発行日 1963年11月1日
Published Date 1963/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202639
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はじめに
われわれは病気というものを身体面からだけ眺め,かんがえ,そして治療するという教育をうけてきた.しかし,人間の身体というものを知れば知るほど,精神というもののもつ働きのきわめて重要なことをはじめて知らされるものである.今日,いわれている精神身体医学(心身医学,Psychosomatic Medicine)の本来の目的も,人間の病気にたいする治療をいかに完全におこなうかという最高の目標からでてきたものだと理解することができる.ただここでいう精神というのは,とくに身体反応や疾病ともっとも密接に関連している人間の感情(あるいは情緒,情動,emotion)といわれるものである.人間は生きていけば,いろいろの体験や事件を経験する.しかし,そのうけとり方は各個人によって違っている.これは基礎に個人の全般的な心の態度,人間性,つまりパーソナリティーがあるからである.精神身体医学は,このパーソナリティーを背景とする感情の動きと現在の疾患との関連性を明らかにして,その疾患の成立を総合的に理解し,合理的に治療していこうとするものである.このような立場から,筆者らは産婦人科方面に検討を加えているが,精神身体医学の実際においては,ひとり医師ばかりではなく,診療に従事する助産婦,保健婦,看護婦みんなが,患者の感情の動揺ないしは感情の乱れを理解して診療にあたるのでなければ,完壁な近代医療とはいえない.
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