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よい子を生み育てるための助言—Ⅰ.健康に育てる条件
高木 俊一郎
1
1九州厚生年金病院小児科
pp.20-24
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202449
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まえがき
「お産婆さん」ということばは,少なくとも戦前に育ったわれわれには懐かしい響きを残している,いざ,お産となれば,もんぺ姿で自転車でかけつけてくださるお産婆さんの姿が目に浮ぶ.私をとりあげてくださった産婆さんがいまどこかにおられるとしたら,ちよっとお会いしてみたいとは,誰も一度は考えたことがあるだろう.私の幼ない頃の記憶には,お産にかけつけて,人手のない家ではお湯をわかしてあげたり,赤ん坊を待ちうける近き未来のお姉ちやんやお兄ちやんに,お菓子まで用意してたしなめてくださる光景が映ってくる.近代の新しいお母さん方の多くは,きれいな病院でお産をするようになって来た.とりあげてくださる人も,昔の産婆さんではない.最新産科学の知識をも身につけた立派な助産婦さん方である.しかし,なお病院でのお産はごく一部であって,全国的にみれば,まだまだ自宅で助産婦さんの手によって生まれでる子供たちが大部分といつてよい.新しい助産婦さん方も,むかしながらの産婆さんの役割を果して下さっていることが多いと思われる.産婆さんの役割はただ子供が生れ出るのを助けることだけではなかった.もちろん妊婦の診察をし,栄養や養護の相談が最も大切な仕事ではあったが,それだけの存在ではなく,未来の母親への,よろづ相談者,助言者,また新しい母視に対しては,育児相談者,教育相談者としての役割が,極めて重要なものであったと考える.
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