医学の話題
交代菌症—膣炎や内膜炎もおこす「抗生物質病」
杉 靖三郞
1
1教育大
pp.16-18
発行日 1953年10月1日
Published Date 1953/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200452
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
第二次大戰のさなかに,カビからとつた靈薬ペニシリンが登場し,時のイギリスの首相チヤーチル(現在も首相)が肺炎で危険におちいつたとき,これをたちまちに治してしまつた.それ以来,このペニシリンはアメリカの手によつて研究され,大量生産がすすめられて,わが国にも紹介された.そして,以来わずか数年にして,わが国に於ても生産にも治療にもすばらしい進展がもたらされ,今日の隆盛をみるようになつたことは,周知のごとくである.
きらに,このペニシリン,グラム陽性菌(連鎖状球菌,肺炎菌,ブドー状球菌などに効く)についで,各国で,いろいろの土壤から放線状菌の産出する抗生物質(又は,抗菌性物質)を探し出すことに懸命の努力が拂われ,次から次へと,数多くの優秀な薬品が世に出て,グラム陽性菌のみならず,グラム陰性菌はもとより,リケツチヤ,ウアイラス(形の大きいもの)糸状菌のあるものにも効くようになり,今日では,もはや抗生物質なくしては夜も日も明けぬようになつたのである.
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.