特集
優生手術実施状況
齋藤 鐐一
pp.11-12
発行日 1953年7月1日
Published Date 1953/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200381
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考察
1.表1を一覧して,とくに目立つことは,法施行の翌年である,昭利24年度における実施総数5.752件を出発として毎年約5.000件宛増加していることであります.そして毎月の数をグラフに画きますと,毎年同じような曲線を画いて,しかも人工妊娠中絶の曲線とよく似ていることが注目されます.優生手術は,妊娠しないようにすることで,妊娠とは関係の深いものでありますが,人工妊娠中絶のように時期を選ぶ必要はないと思われるのであるにも拘らず,人工妊娠中絶の実施状況と似ているのは興味深い現象であります.
2.他の面から眺めてみますと,人工妊娠中絶と同樣に,優生手術においても,実施数の大部分(約95〜97%)が法第3條による医師の認定による優生手術でありしかもそのうち母体保護を理由とす××る者が殆んど大部分を占めていて,遺伝性疾患,癩疾患によるものは極く僅かであり毎年殆んど同数に近いと申してもよいことであります.人工妊娠中絶でも母体保護を理由とするものが90%に達している現状であります.事実優生手術と人工妊娠中絶とが同時に,或は引續いて実施されている例が多いと思われるのでありまして,これらのことが優生手術と人工妊娠中絶とのグラフを似たものにしているのではないかと考えられます.
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