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お産とお守り札
瀨谷 かね
pp.44-45
発行日 1952年10月1日
Published Date 1952/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200199
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妊婦と精神安静を結びつけて考えるとき私共助産婦は言葉のみでは理解させ得ない種々の場面に直面することが度々御ざいます。前からの信心でない若い妊婦が初診に見えて5カ月のお腹帯をしめる時誰もが言い合わした樣に昔からの言伝えを其まゝ各種のお守りを持参なさいます。
それが水天宮樣であつたり塩釜神社であつたりお地蔵様であつたりいたします。
それが自家の宗教でもなく又自分が日頃信心している神仏でもないらしく,只お産に対してのみ無事に安産する樣にと祈る他力本願な,そして精神的に慰められる強い信念とでも申しましようか。水天宮樣や塩釜樣がお産の神樣であるとして妊娠してから信心されお守として広くもちいられる樣です。水天宮樣や塩釜樣等,神樣としてのお守りはわかるが,鬼子母神樣やお地蔵樣はお寺に住居をおいてお線香をいぶして祈つているのを見受けるので仏教として取扱うものらしいのに,婚家と里方から別々に二つのお守りを同時に持参して来て両方同時に巻き納める事もしばしばあり,それが迷信であつても教訓であつても害にはならないので私としては何とも申し上げないが,分娩までにはそのお守りも汗と体温でくしやくしやになつて破れているがそれでも妊婦は大切にしているのが普通です。
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