講座
會陰保護の問題
佐久間 兼信
pp.10-12
発行日 1952年2月1日
Published Date 1952/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200030
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我が國では正常分娩の大多數が助産婦の手で取り扱われ産科醫が會陰を切開且つ縫合する場合が少ないから,會陰保護は助産婦にとつて重要な技術の一つとなっている!而も日本人は手先が器用なので我が國の助産婦が會陰保護で會陰裂傷を豫防している手際は,日本助産婦の大なる誇りとしてよい。尤も中には下手の人もあろうが,また痛快なほど巧みな助産婦もおる。昔,神田駿河臺にいた當時一流のHという産婆さんが「私はまだ一度も會陰裂傷を起させたことがない」と豪語していたが,少なくも私が共に介助した何回ものお産に一度も會陰裂傷のなかつたのは事實である。但し會陰が頗る緊張してもう堪えそうもないと見るや,「先生どうぞ御覧を」というて,暗に豫防切開を要請する。即ちH女史は裂傷の避け難いかどうかをよく辨え,避け得ると認めたものには極めて巧みに保護を遂行したものである。惟うに,H女史の施術のコツは,主として産婦の娩出力を巧みに利用したのにある。既に娩出期になつて腹壓が必要と認めた時には,陣痛發作と同時に「ウーム」「ウーム」と自ら發聲して聲援大いにつとめた。この場合會陰に手をあてがつていても押しかえす力はあまり強くは加えていないようであつた。
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