玉手筺
患者の應接
大谷 しよう
pp.34-35
発行日 1952年1月1日
Published Date 1952/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200014
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私共が往診の依頼をされて,初めて産家の玄關に訪ずれた時,それを取次に出て來られた人の應待ぶりによつて,大體其家の有樣がわかる。それと同時に,これから診察しようとする妊婦に對しての大凡その心構えが出來るものであつて,人の第一印象と云うものは如何に大切な事であるかと云う事をいつも痛感させられる。しかしこのことは私共が妊婦取扱に當つて實行は仲々むずかしい。今之と反對に,妊婦が初めて私のところへ診察に來られる時の事を考えて見よう。妊婦は妊娠によつて平素よりは一般に神經が過敏になつていて,一寸した事にも感じ易くなつている。それに初めて診察に來る場合はこれから行こうとする助産所の人々に對して何となく一種の威壓されそうな氣おくれと不安を抱きながら來る事と思う。その時取つぎに出た助産婦なり助手なりの一擧一動は,妊婦への第一印象として,つよく頭に殘るものと考えなければならない。だから初めての場合は特に相手の氣持ちに注意し,洗練された態度で應接しなければならないと思う。そしてほんとうに心から迎える態度を示し,いつも朗かに接して,少しでも妊婦をして氣おくれの氣分を抱かせない樣にしたいものである。その人によつて小さな事迄注意深く應待し,妊婦に好感を持たす樣に心がけなければならない。この時の助産婦の態度如何によつて妊婦の第2回目の來否が決められるものである。
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