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緒言
膝関節は下肢の中央にあって,体重を支持し,しかも高度の安定性と広汎な運動性が要請される特徴を有している.構造上,膝関節は2つの関節,即ち膝蓋骨大腿骨関節と脛骨大腿骨関節により構成されているが,機能的には1つの関節と考えられている.人体の関節には,関節面が幾何学的によく一致するものと,全く一致しないものがあり,膝関節は後者の良き例である.即ち,脛骨の近位関節面はほぼ平坦であるに反し,大腿骨の遠位関節面は複雑な内・外顆に分れている.従って,関節面相互の接触は小範囲に限られるから,安定性保持にはこの欠を補うぺき軟部組織の役割が特に重要となる.関節の前面に存する膝関節伸展筋,即ち大腿四頭筋は膝蓋靱帯と共に膝蓋骨を介して膝の強力な動的安定装置を構成する.また,脛骨大腿骨関節面間に介在するメニスクスや両側に存する側副靱帯,顆間に存する前後の十字靱帯は膝の静的安定装置としていずれも重要な役割を果している.
このように複雑な形態と構造によりかもし出される関節運動は,必然的に複雑なものとなり,その運動は単なる蝶番運動でなく,関節面の形態に応じて,屈伸運動にころがり,すぺり運動が組み合わされて行われるものと考えられる.
そこで,先ず膝関節運動を解析するに当って,運動の基盤をなすと考えられる大腿骨顆の形態を詳細に分析し,膝運動に随伴する廻旋運動の機序を解析しようと考えた.また,関節面相互間の力学的解析を行って膝蓋骨及びメニスクスの意義を明らかにせんとした.また,膝関節運動に関与する膝伸筋及び屈筋について筋電図学的研究を行い,Kinesiologyの立場よりこれらの膝関節運動における役割を解析した.これらの各関節構成体の意義を明らかにし,膝関節の最大の機能が要請されると考えられる階段昇降運動についても言及したい.
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