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編集後記
上田 敏
pp.606
発行日 1975年7月10日
Published Date 1975/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103379
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本号がお手もとに届くころは,長く,時には寒い位だった梅雨も終って,強い夏の日ざしがカッと照りつけはじめている頃であろう.不況下で迎える2年目の夏,障害者の職業戦線では暗い話題が多く,高度成長の波に乗ってここまで伸びてきたリハビリテーションと障害者福祉の実力と真価が今こそ問われる厳しい時節となったが,四季の大いなる運行にも似て障害者の人権意識の成長は決してとどめることはできないであろうし,将来の着実な発展の芽はむしろ困難な季節の中でこそ育つものであろう.暑い夏に体をきたえ,稔りの秋にそなえたいものである.
さて本号は「身体障害者と移動手段」を特集した.ImpairmentがDisabilityとなることを防ぎ,Disabilityが社会的ハンディキャップとなることを防ぐ上で,車椅子,自動車,公共交通機関などの移動手段は重要な意味をもっている.医学と工学,それも機械工学だけでなく建築学や都市工学などとの協力が必要な分野である.永井氏,中村氏,橋倉氏・他には障害者用自動車の機械的な面と基本的な考え方,わが国の免許制度について論じていただいた.筆者の不勉強で「意外」と思うほど多くの面で進んでいることを知り感銘を受けた.陳氏の地下鉄システムは京都市での計画という,現実の場を踏まえた,現状で実現可能なプランとして,種々の制約をもちながらも注目すべきものである.加倉井氏・他の電動車椅子の現状分析,土屋氏司会の座談会での車椅子JISの問題点の指摘も時宜を得たものと思う.「移動手段」といえばこの他にトランスファーのための種々の装置やバス,国鉄の問題なども当然とりあげるべきところだが,他の機会にゆずらせていただいた.
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