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はじめに
心理学は人間の行動について研究する学問であり,近年目ざましい発展を遂げてきた,そこで明らかにされた成果は,リハビリテーションにさまざまな形で貢献することができよう.たとえば,それは次のような領域で関与してきている.(1)身体機能の障害を治療訓練するために必要な知識や技術を提供することによって援助する.(2)心理学の知識や技術が中心となって,心理的問題に原因する身体機能の障害の治療訓練を行う.(3)身体機能の障害に原因する,または,それと同時に現れた心理的問題の治療を行う.医師やセラピストは,治療や訓練にあたって,もし障害者の性格や能力等をあらかじめ知ることができれば,彼の性格や能力に応じた方法でそれらを行うことによって,効果をより多く上げることができるかもしれない.また,最近のAmerican Journal of Occnpational Therapy1)に学習理論にもとづく作業療法が紹介され注目されているが,それはスキナーSkinner,F.らによる道具的条件づけの研究から得られた学習に関する心理学の成果の一つである.さらに,治療や訓練にあたって障害者自身のやる気がとりわけ重視されているが,このような動機づけの問題に対しても,心理学は多くの役割を果すことができるであろう.こうしたことがらは,心理学が身体機能の障害の治療または訓練にいかに多くの援助を行うことができるかを示す2,3の例にすぎない.前記の(2)の例としては,不安や疾病への逃避のような心のダイナミックスにもとづく歩行障害などをあげることができる.身体的問題が同時に心理的問題をひきおこすことは決して少なくなく,障害者は時にひどい悩みや退行依存といった望ましくない行動を示していることがあるが,こうした問題は(3)の例である.失認や失行の問題はここに入れてよいであろう.
このように,心理学の知識や技術はさまざまな形でリハビリテーションの種々の領域の中にとり入れられているが,そこでとりわけよく利用,時には誤用や乱用されているのは心理テストであろう.そこで,心理テストとは何か,どのような時に心理テストを用いるとよいか,どのような心理テストを使用しなければならないか,心理テストを使用する場合の注意などについて述べ,その後,リハビリテーションにおいて利用する価値のある心理テストを具体的に紹介しよう.
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