Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに(人工呼吸管理患者へのリハビリテーションの意義)
歴史的にこれまで人工呼吸管理中の患者は深鎮静下に(時には筋弛緩薬を使用してまで)人工呼吸を提供されてきた.ところが2000年に,人工呼吸管理下の集中治療患者に対して,1日1回の鎮静薬の投与を中断し,覚醒を得ることにより,より適切な神経学的な評価を行うことが可能になり,さらに人工呼吸装着時間,ICU滞在時間を減少させることが報告された1).プロポフォールやデクスメデトミジンなど鎮静深度調節がより容易な薬剤が使用可能になったことが後押しをして,さらには鎮静深度についてもRASS(Richmond Sedation and Agitation Scale)などのさまざまな簡便で使用しやすい鎮静スケールが看護師を中心に普及したこともあり,より適切な(これまでよりは浅い)鎮静深度管理と「1日1回の鎮静中断(daily sedation interruption)」がその後の集中治療患者の鎮静管理の主座となった.
集中治療における神経筋疾患(critical illness myopathy and neuropathy)は多くの知るところであるが,特に人工呼吸器装着患者では,気管挿管ゆえの体動の制限での長期臥床,炎症性サイトカインの増加,低栄養などが相まって神経筋異常から生じる筋力低下が生じ,その結果,人工呼吸器装着時間,ICU滞在日数の増大,身体機能の低下,ひいては集中治療後や退院後の日常生活の質の低下へとつながる(図1)2).
こうしたことから人工呼吸からの離脱困難患者(difficult to-wean patient)に対して,さまざまな改善策が提示され(表1)3),そのなかでも,上記のdaily sedation interruptionと「早期」からのリハビリテーション(この場合には,whole body rehabilitationを指す)や歩行(early mobilization)が提唱されるようになった.一時代前では想像もできないような,気管挿管された人工呼吸器装着患者が,気管挿管した早期から歩行する,といった写真が2008年の雑誌に掲載され4)衝撃を呼んだが,それからわずか2,3年で人工呼吸管理患者のリハビリテーション風景(図2)もそう珍しくないようになった.換言すれば,これは最近の集中治療領域における歴史に残るようなパラダイムシフトの1つと言うべきイベントである.
本稿では,人工呼吸管理中の患者に対してのリハビリテーションの意義と適応,実際の施行に当たっての注意事項や目標などを概説する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.