書評
—角田 亘(編集)/北原崇真,佐藤 慎,岩戸健一郎,中嶋杏子(編集協力)—「回復期リハビリテーション病棟マニュアル」
生野 公貴
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1西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部
pp.1331
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202117
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回復期リハビリテーション病棟(CRW:本書に倣ってこう略す)は2000年に新設され,私が臨床でCRWに携わったのは2004年のことである.当初はまだ右も左もわからないなか,先行導入されている数々の病院に見学に行っては,当院でどのようなCRWを築き上げていけばよいかと暗中模索,いや,ほぼ五里霧中の状態であった.そのようなときに,もしこのようなマニュアルがすでに発刊されていれば当時の私の机にそっと置いてあげたい.この本を読んだ一番の感想はそれである.
本書はCRWにかかわる膨大な知識やノウハウについて,どのCRWに勤める医療者が見ても一定のコンセンサスが得られるベーシックな内容から,実際のCRWを長年経験した方でないとわからないような一歩も二歩も踏み込んだ内容までわかりやすく記載されている.特に,第4章2の後半部分の「復職支援」や「自動車運転再開のための訓練」の項目には大変驚いた.おそらく,自動車運転までフォローしているCRWは全国的にもまだまだ少ないと思われるが,すでに詳細な診療フローチャートが完成されており,かつ多くの症例の経験から得られたであろう要点が細かく記載されているところから,普段のリハビリテーション診療の質の高さがうかがえる.また,編者であり著者でもある角田亘先生のリハビリテーション医としての誇りが随所に感じられ,“理想のCRWとはこうあるべき”といった力強い記載が読んでいて心地よい部分である.記載内容と同じような取り組みができていればお墨付きを得た気分になり,今日までの努力は無駄でなかったと安堵している.
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