入門講座 症例を担当するということ・9
トラブル回避と解決
桝田 康彦
1
Yasuhiko Masuda
1
1社会福祉法人大阪暁明館大阪暁明館病院リハビリテーション科
キーワード:
トラブル
,
回避
,
解決
,
心構え
Keyword:
トラブル
,
回避
,
解決
,
心構え
pp.1033-1040
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200715
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はじめに
入門講座「症例を担当するということ」のテーマの1つに,「トラブル回避と解決」が選ばれたことは,理学療法を取り巻く場面でトラブルの発生件数が増しているからでしょうか.私の個人的経験から考えると,30年前と比較して数倍以上に増えているという印象があります.
1990年代の市場原理主義の台頭,年金や医療費などの諸制度の切り崩しなどに始まり,現在は,景気低迷により個人の自己防衛の意識が高まっています.医療費の抑制策が患者さんの自己負担額の増加をまねき,支払うお金が増えたことにより,患者さんは医療にも費用対効果を求めるようになりました.また,「厚生白書(平成7年度版)」で医療のサービスが取り上げられたことにより,医療はサービス業であると一般に認識されるようになってきています.医療の現場でも顧客満足度の向上が叫ばれ,各医療施設でも接遇研修を行うようになりました.このようななかで,医療従事者と患者さんとの関係も少しずつ変化し,患者さんが医療に対する不安や不満を表す機会や環境は整ってきています.反面,患者さんとのトラブルやクレームを回避したり解決したりする教育を受けた理学療法士は数少ないと思います.
本稿では,自身が経験したケースを提示し,そのトラブルに関係する因子を紹介することで,みなさんにトラブルに対する回避の心構えや解決のヒントを考えていただく機会になれば幸いです.
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