特集 TENS
腹部外科手術後のTENSの効果
徳田 光紀
1,2
Mitsunori Tokuda
1,2
1社会医療法人平成記念病院リハビリテーション課
2畿央大学大学院健康科学研究科
キーワード:
経皮的電気刺激治療(TENS)
,
腹部外科手術
,
鎮痛
,
呼吸機能
,
鎮痛薬使用量
Keyword:
経皮的電気刺激治療(TENS)
,
腹部外科手術
,
鎮痛
,
呼吸機能
,
鎮痛薬使用量
pp.255-260
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200499
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はじめに
腹部外科手術後は,効果的な鎮痛により早期離床を促すことや呼吸機能の改善を図ることにより,術後肺合併症を予防することが重要である.腹部外科手術後症例の肺合併症は5〜16%の割合で生じるとされている1〜3).外科手術後の鎮痛には薬物療法が中心となるが,副作用の問題が生じる.近年では,モルヒネ系麻薬による硬膜外麻酔よりも副作用が少ないとされるフェンタニル系静脈内投与が薬物療法の主流となっているが,それでもその副作用で最も多い嘔気・嘔吐は20%以上,呼吸抑制に関する副作用も5%程度の割合で生じると報告されている4〜6).その他,一般的に使用される内服薬も含めて薬物療法には眠気や眩暈など多くの副作用症状が出現し,日常生活活動や理学療法実施の阻害因子となる.
一方で,経皮的電気刺激治療(transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)は主にゲートコントロール理論に基づく作用と内因性オピオイド放出などによる鎮痛効果があり,非侵襲的で副作用のほとんどない鎮痛手段である.TENSは理学療法士が従来使用してきた代表的な鎮痛手段の一つであるが,本邦において外科手術後の急性痛に対して実施することは一般的ではない.しかし,海外では外科手術後症例の急性痛に対してもTENSが積極的に使用されており,多くの先行研究が報告されている.
本稿では,外科手術後のTENSに関する先行研究を概説し,自験例をもとに実際に臨床で使用するための実施方法を紹介する.
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