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はじめに
小児がんは全悪性腫瘍からみると非常に少ない罹患数だが,毎年約2,000〜2,500人が新たに診断されている1).小児がんの診断は,それまでの児と家族の生活に多大な影響をもたらす衝撃的な出来事である.児は住み慣れた環境や家族,親しい友人から離れ治療を受けることになり,両親はわが子が小児がんになったという大きな不安を抱えながら治療を受ける児を支えるという変化に対応し,兄弟姉妹もさまざまな物理的,精神的な影響を受けることになる.
小児がん治療を行う施設には,このように人生の有事のただなかにある児と家族に対し,多職種で包括的なケアを提供することが求められている.そのなかでも最も重要なことは過不足のない適切ながん治療を行うことであると考えるが,小児がん治療は期間が長く,療養中の生活全般にわたる諸問題,すなわち精神・心理面や社会性への配慮,勉強面,体力維持や機能障害に対するリハビリテーション,退院後の生活へのスムーズな移行などさまざまな支援が必要となる.多職種が,現状の認識と今後の方向性を共有しながら患児家族にかかわることによって,少しずつ現状を受け入れ,より良い療養生活に向けて自主的に取り組めるようになると思われる.小児がん治療を行う施設のスタッフは,各癌腫の特徴や治療に関する知識を持ち,それぞれの専門性を発揮するための経験が必要であるが,これまでは,小児がん治療が可能な約200の施設で治療を行っていたため,症例が分散してしまい,関係職種それぞれの経験が蓄積されない傾向があった2).そこで専門施設に患者を集約し,人材の育成と質の高い診療の提供が急務との判断から2013年に小児がん拠点病院が選定された(表1)3).このように,国の施策としては拠点病院に患者を集約しようとする方向であるが,実際には当院のように拠点病院ではない施設であっても,年間数十人の新患患児の診断と治療を行っており,現状では小児がん拠点病院に加え,大学病院やこども病院などその地域において診療可能な施設で診療を行っているのが現状であろう.
日常臨床で小児がん児に対して理学療法を行う理学療法士は非常に少数であると思われる.しかし,上述のように限られた施設で治療を行うということは,患児・家族からすると自宅から離れた場所で治療を行うということであり,退院後のリハビリテーションや予後が限られた場合での在宅療養などで患児を支えることができるように,小児がん治療を行う病院と地域の理学療法士との連携は重要である.
本稿では,小児がん治療の特徴,小児がん児に対する理学療法,退院および復学支援などについて論じてみたい.
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