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読者の声
岩田 研二
pp.500
発行日 2014年6月15日
Published Date 2014/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106659
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- 文献概要
「私を変えたあの出来事」
私の大好きな祖父が脳梗塞で倒れた.一命は取りとめたが,重度右片麻痺を伴い全失語を呈し1か月後に亡くなった.倒れた翌日,私は初めて患者の家族の立場となり,お見舞いに行った.病室は状態も悪かったこともあり,ナースステーションのすぐ横であった.私は落ち込み,祖父にどのように話しかけてもいいかわからず,しばらく下を向いたまま椅子に座っていた.「あはははははは…」.どこからか笑い声が聞こえてきた.「誰だ,こんなときに笑っている奴は…」.僕は心の中で思った.なおも笑い声は続いた.答えはすぐにわかった.それは隣のナースステーションで楽しそうに会話をしている看護師たちであった.とても悔しかった.
この出来事がきっかけとなり,それから私は患者の家族の立場を常に考えながら臨床を行っている.家族がリハビリテーションの見学に来たら,現在の状況をわかりやすく説明している.祖父のベッドサイドのリハビリテーションを見学していた母親が私に教えてくれた.「あの理学療法士の方はとてもお父さんのことを考えていろいろなことを聞いてくれるし教えてくれる」.私たちは患者だけでなく患者の家族に対しても適切な対応ができるようにならなくてはならない.
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