特集 理学療法士による起業
起業の実例
4.「起業」から「安定した経営」へ移行するために必要なこと
山根 一人
1
Yamane Kazuto
1
1株式会社アール・ケア
pp.313-316
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101391
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はじめに
現在までに,「起業したいので話がしたい」という人たちが数多く筆者を訪ねてきた.その主な内容は,「どうすれば安全に起業できるか」そして「起業することにより,今の仕事よりも儲かるかどうか」が焦点になっていたような気がする.確かに,お金は経営を継続・発展させる手段として不可欠なものではある.しかし,起業にあたって重要なことはそれだけではない.本稿では,筆者の経験を通して,起業・経営に必要なより本質的な事柄について述べる.
かつて,理学療法士の業界内では,「起業」という言葉は悲しくも「一攫千金,金儲け」といった冷やかなイメージで受け止められていた.しかし,筆者が今日まで19年間にわたり実際に経営していく中で学んだことは,起業とは金儲けではなく「専門性を生かして地域・社会にどう貢献し,それに関わる人々(お客様や社員)をどう幸せにするか,ひいては集団としての組織価値を地域の中でどう作っていくかが重要である」ということだった.
繰り返しになるが,まず起業にあたっては「金儲け」といった軽薄な思考展開ではなく,広義の社会貢献が前提であるという点に深い理解を賜りたい(表1).なお,本稿での定義として,起業とは「現職を退職した時点から10人前後の家内工業程度の事業体,期間的には1年程度」をいい,経営とは「起業からさらに規模と期間を拡大したもの」として稿を進める.
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