特集 痛みの病態生理と理学療法
痛みに対する理学療法における臨床推論
斉藤 昭彦
1
Saito Akihiko
1
1東京福祉大学
pp.105-112
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101109
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はじめに
臨床において患者は様々な痛みを訴える.痛みは患者が経験するものであるため,まったく同じ痛みは存在しない.病態生理学的要因に加え,心理社会的要因など,多くの要因が痛みに影響を与える.同一の患者でも環境や時間帯により痛みが異なる.また,必ずしも組織損傷を伴うものではない.
患者の訴える痛みのすべてを解明してから,適切な理学療法を行うことが理想であるが,現実的には,初日から患者のすべてを把握することは難しい.しかし,その日から何らかのマネジメントを行わなければならない.
痛みを伴う患者の問題は,ブラックボックス(中が見えない黒い箱)に例えることができる.外見上から,箱の中に入っているものの大きさなどをある程度類推することができるが,観察しただけでは,実際に何が入っているかはわからない.しかし,その箱に触れ,ゆり動かすことにより,重さや性質(固形物か流体かなど)などに関する情報を得ることができる.痛みの問題も当初から実体をつかむことはできないが,適切な入力を加え,その反応から実体に迫ることができる.
痛みに対する理学療法では,臨床における諸現象を論理的に解釈し,未知の事柄を判断し,決定していくプロセスである臨床推論が重要となる.本稿では,このような痛みに対する臨床推論の実際について述べる.
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