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疫学とは集団を対象とし,集団の法則性を研究するのに対し,臨床医学とは個を対象としている.そして,臨床疫学とは集団の疫学と個人との橋渡しをするものであり,その特徴は集団から得られたデータを患者個人に適応させることや,不確実性を扱う考え方(確率論的世界観)をよりどころとしている.単一患者試験では,文献だけからでなく臨床観察からでも十分なエビデンスは得られるが,エビデンスの適応の際には患者の物語を文脈から理解するnarrative-based medicine(NBM)と科学的根拠に基づいたevidence-based medicine(EBM)の両者によって初めて質の高い医療を行うことができる.ここでは気道クリアランス法のEBMについて概説する.
エビデンスの強さとその意味付け
EBMとは,「個々の患者をケアする際の意志決定をその時点で得られる最善のエビデンスに基づいて行うこと」である.その手順は,疑問点をキーワードで表し,文献検索をきめ細かく行い,得られた文献の信憑性について批判的吟味を行う.そしてその文献の結論を患者に適応できるかどうかを注意深く判断する.エビデンスにはレベルがあり,症例報告,症例集積,症例対象研究,コホート研究,ランダム化比較試験(RCT),二重盲検ランダム化比較試験,メタ分析・システマティックレビューの順にレベルが高くなる.メタ分析とは分析の分析という意味であり,原著論文をまとめてオッズ比(OR)や効果量(ES)で分析し,結果のまとめは定量的である.これに対しシステマティックレビューは,明確で焦点の搾られた疑問から出発し,網羅的な情報収集から集められた情報を批判的に吟味し,それらの情報を要約しており,結果のまとめは定量的であるかは問わない.
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