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はじめに
2004年に発刊されたAustralian Journal of Physiotherapyの50巻の全体像を紹介し,その中でも筆者が特に興味を持つ論文の概要を紹介し,批評をコメントとして述べる.本稿が臨床家の研究活動の一助になれば幸いである.
50巻2004年の全体像を表1に示す.Australian Journal of Physiotherapyでは査読原稿について原著(original paper),短報(short paper),報告(report)という厳密な分類はされていない.また,Short-reportという理学療法学とは異なる査読原稿分類がある.専門分野別の論文数を比較すると,呼吸管理に関する論文が多いことが分かる(6件).研究デザイン別で論文数を比較すると無作為化グループ分け比較を行っている論文が多い.
無作為グループ分け比較の研究デザインは,研究者の被験者選択の際に意図的操作のバイアスを排除し,被験者特性の偏りを防いで治療効果の検出力を高めようという研究方法である.ただし,この方法を用いたからといってすぐに治療の有効性が完全に証明されるわけではない.効果判定を行うための測定項目に因果関係を推測できるような原因パラメータと結果パラメータが含まれるところまで研究を段階的に発展させていかなければ,最終的に治療効果が妥当であるかを判定できないと筆者は考える.研究論文を読む際には研究の形式だけに目を奪われるのではなく,因果関係すなわちメカニズムを追及する目を持ち,現在どの段階の研究が行われているかを判断することも論文を批評する上で重要である.
以下にAustralian Journal of Physiotherapy, Volume 50, No. 1-No. 4, 2004の中のいくつかの論文を紹介する.
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