増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
1.検査の考えかた
2)止血異常における検査とその組み立てかた
(3)血栓症,播種性血管内凝固症候群(DIC)の検査指針
出口 克巳
1
1三重大学医療技術短期大学部
pp.136-140
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906498
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はじめに
血管内に血栓が形成されると,その存在部位より末梢部では虚血状態に陥り,組織や臓器の機能障害をもたらし,時には致死的転帰をとることすらある.1989年の『厚生の指標』によれば,精神障害を除き6か月以上入院した65歳以上の患者の60.6%が循環器系の疾患であり,その41.8%は脳血管疾患であったと報告している.この循環器系疾患の多くは血栓性疾患である.血栓発症に至るまでには血小板機能亢進,凝固亢進あるいは低線溶を特徴とする血栓準備状態(prethrombotic state)と呼ばれる時期が存在することが考えられる.このような病態を早期に把握し,適切な治療により血栓発症を予防することは,現代医療の重要な課題の一つでもある.
播種性血管内凝固症候群(DIC)は,なんらかの原因により急激に全身の微小血管内に血栓が形成される結果,凝固因子量・血小板数の低下,線溶亢進による出血や臓器障害に基づく症状をきたすものである.DICにおいては臓器症状が著明となった時点での治療開始では治療効果を期待し難いことが多い.したがって,DICの早期診断と早期治療開始が望まれ,DIC準備状態,pre DICなどと表現される病態が注目されている.このような現状を踏まえ,今回,血栓症ならびにDICの検査方針に関しても早期診断のための検査を主に記載する.
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