病理検査こぼれ話
常勤病理医のいない施設へのアドバイス
竹屋 元裕
1
1熊本大学医学部病理学第2講座
pp.265
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903518
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常勤病理医のいる施設では,日ごろから技師と病理医とのコミュニケーションが図られ,常に一定した良質の標本が作られているが,常勤病理医のいない施設では,標本の出来映えに対するフィードバックに乏しいと思われる.日常,複数の施設から送られてくる標本を鏡検する機会があるが,まれに固定や染色のよくない標本に遭遇すると診断に難渋することがある.このような施設に標本作製やその取り扱いについて簡単なアドバイスをすることがある.細かいことではあるが,これから病理検査を始める方々にも参考となろう.
常勤病理医のいない施設では,病理技師が主体となって主治医とともに臓器の切り出しを行うこともしばしばであろう.この際,薦めているのが『外科病理マニュアル』(長村義之著,文光堂)である.病理診断の基本的な考えかたとともに臓器切り出しのスタンダードな方法が簡潔に記載してあり,本増刊号とともに病理検査室に常備してほしい1冊である.実際の標本作製に際しては,染色後の標本は粘膜面が下向きになるようにラベルを貼ってもらっている.鏡検の際には,粘膜面が上向きとなるからである.また,消化管などの生検標本などで,複数の小切片が1枚のプレパラートに載っているときなど,端の標本を見落としてしまう可能性がある.病理医の不注意で起こるミスで,あってはならないことであるが,これを未然に防ぐために,プレパラート上のすべての標本をマーカーペンで囲ってもらっている.
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