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YAC
青木 直人
1
1東京都立衛生研究所毒性部病理研究科
pp.668-670
発行日 1996年7月1日
Published Date 1996/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902837
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染色体は直線状DNAがコンパクトに折りたたまれた形になっており,有糸分裂で2倍になった染色体は分裂した細胞に一組ずつ配分される.このように染色体が安定して複製し,分配されるための装置として,DNAの複製開始点,複製された染色体を分離するための紡錘糸が結合するセントロメア(動原体),染色体の末端にあり,DNAの安定性に関与するテロメア(末端小粒)などが備わっている.これらの3つの装置をプラスミドDNA上に組み込み,数十万塩基対以上にも及ぶDNAを取り込み,酵母内で人工染色体として複製できるようにしたものがYAC(yeast artificial chromosome,酵母人工染色体)であり,遺伝子ライブラリーの作製に用いられる.遺伝子ライブラリーは,細胞遺伝子情報を担う染色体DNAの断片や転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)に相補的なDNA(complimentary DNA;cDNA)を満遍なくベクターに組み込んでできた遺伝子組換え体の集まりを指す.遺伝子ライブラリーを作製するためのベクターにはラムダファージ(24kb*までのDNAがクローニング可能),コスミドベクター(35〜45kbのDNAがクローニング可能)などがあるが,YACベクターは他のベクターに比べ組み込めるDNA断片のサイズが非常に大きいという特徴がある.
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