今月の表紙
中皮細胞
古田 則行
1
,
都竹 正文
1
,
坂本 穆彦
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
pp.223
発行日 1994年3月1日
Published Date 1994/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901829
- 有料閲覧
- 文献概要
中皮細胞は胸腔,心嚢腔,腹腔の内面を覆う細胞である.通常(静止状態)では単層扁平上皮である(写真a).漿膜下への癌浸潤,炎症,肝硬変などで,滲出機転,循環障害が起こり,体腔液が貯留するとともに中皮細胞は増生,再生を繰り返し,活動的な形態を示す.これを反応性(活動性)中皮細胞と呼ぶ.扁平であった中皮細胞は,立方状,円柱状の変化し,体腔液中の剥離する.異型核を有する中皮細胞は,ときの癌細胞との鑑別に苦慮することがある(写真b).漿膜原発腫瘍には,中皮腫がある.中皮腫のは上皮型,線維型,混合型があり,それぞれ良性と悪性がある.通常,体腔液中の見いだせるのは,上皮型および混合型悪性中皮腫である(写真c,d).
写真aは静止状態のある中皮細胞である(開腹時洗浄材料,パパニコロウ染色,×1,000.開腹,開胸時の体腔面擦過,洗浄を行った場合にみられる.通常ではシート状の出現形態を示す.細胞結合性の疎な細胞群で,細胞質の辺隊は不明瞭で淡く,徐々に背景に溶け込むようである.クロマチンは細顆粒状で均等分布し,濃染することはない.また,核縁は薄く円滑である,小型核小体が1〜2個みられる.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.