明日の検査技師に望む
検査技師を思う
足立 山夫
1
1東京都立駒込病院
pp.110
発行日 1994年2月1日
Published Date 1994/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901798
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30年前になるが,私が病理学教室に入局したとき,まず初めに教えられたことは標本作製のためのメス研ぎである.標本の切り出し,包埋,ブロック作製,薄切,脱パラ,染色なども検査室で先輩やら技師の方々からさんざつぱら手ほどきを受けたものだ.何か月も朝から晩までメス研ぎと標本作製に専念した.きれいな標本を作らなければ見えるものも見えないし,ましてや新しい所見など見つけることなどできるものではないということなのである.与えられた標本が良い標本かどうかを見極めることが病理組織学の基礎である,それには標本を自分で作ってみなければだめだという.それから二,三年のうちに自動メス研ぎ器なるものができてメス研ぎは勝手にやってくれるようになった.脱水,包埋も自動的にできるようになって,手作りのときにしばしばみられたテンプラのようなカラカラな標本や,パラフィンの浸透していない標本はなくなったし,刃こぼれのあるメスで標本を作る心配もないので,むしろ失敗のない標本がしかも短時間で作れるようになったのである.なんだかむだな時間を過ごしたような気がした.
4年後に臨床に移ってから自分の患者さんの血算は自分ですることになっていた.自分専用の検定ずみメランジュールで患者さんから耳朶血を採り,計算盤を用いて血球を数える.メランジュールの吸いかた,計算盤の使いかたがうまくなると数値に対して自信がつく.
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