検査データを考える
病理組織標本にみられるアーチファクト
高梨 利一郎
1
1三井記念病院中央検査部病理検査科
pp.1111-1116
発行日 1993年12月1日
Published Date 1993/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901758
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はじめに
光学顕微鏡で観察する病理組織標本は,理想的には自然のあるがままの姿を表現したものが望ましいわけであるが,他の臨床検査材料と同様に各種の標本作製過程(preparation process)を経過して組織標本となるのであるから,各段階での誤りや方法そのものから望ましくない人工産物(アーチファクト;artifact)を生ずる.この人工産物が最も少ないものが良い組織標本といえると同時に,アーチファクトの多いものは悪い組織標本である.しかし,病理組織検体の組織採取にはさまざまな制約があるうえに,固定,切り出し,脱水・パラフィン浸透,パラフィン包埋,ミクロトームによる薄切,脱パラ,染色,封入,ラベル貼りまでの全標本作製過程の各段階でアーチファクトが生ずるのである.
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