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血小板の細胞内ナトリウムイオン濃度
松野 一彦
1
,
小林 邦彦
1
,
対馬 千秋
2
1北海道大学医学部臨床検査医学
2北海道大学附属病院検査部
pp.936-938
発行日 1992年10月1日
Published Date 1992/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901307
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はじめに
生体内のナトリウム(Na)は,約97%が細胞外液中に存在し,水分の保持,浸透圧や酸・塩基平衡の調節に必須な陽イオンである.これに対して細胞内のナトリウムイオン(Na+)は,細胞外に比べおよそ1/4から1/6の低い濃度に保たれており,この細胞内外の濃度勾配が栄養分の取り込みやCa2+など他のイオンの制御に関係し,細胞機能の発現に重要な役割を果たしていると考えられている.したがって血清Na+の測定とともに細胞内のNa+濃度測定も細胞機能の重要な情報を与えてくれるはずである.しかしながら,これまで簡便な細胞内Na+の測定法がなかったため,その意義については十分理解されてはいない.現在までに用いられている細胞内Na+の測定法は,細胞を破壊して炎光光度法や原子吸光法などで測定する方法や,NMR法を用いるものである.前者は遊離のNa+ではなく総Naを測定するもので,刺激による濃度の変化を経時的にとらえることが困難であり,後者は測定に特殊な装置を必要とし,大量の試料を必要とするなどの欠点を持っていた.
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