増刊号 尿検査法
II.各論
2.尿糖
(2)フコース
佐々木 禎一
1
1札幌医科大学附属病院検査部
pp.70-71
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901069
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はじめに
生体内ではL-フコース(L-F;6-deoxygalactose)は,シアル酸と同様に複合糖質の糖鎖の非還元末端に存在し,分子間の情報伝達や血液型抗原決定に関与している.1952年Dische & Osnosにより血中に存在することが示され1),その後癌患者で血中濃度が上昇しているとして注目されたが,近年多くの癌関連糖鎖抗原の非還元末端にL-フコースが含まれることが知られ,血液型抗原とともに注目されている.
また癌患者ではL-フコースの上昇のほか,L-フコースを含む糖脂質の異常蓄積,L-フコースの代謝に関与する酵素(α-L-フコシダーゼ,フコシルトランスフェラーゼなど)の増加や,リンパ球やマクロファージに対するL-フコースの病態に対する役割が指摘されている2,3).さらに近年肝癌,肝硬変で尿中L-フコース量が増加することが報告され4),尿中L-フコースが腫瘍マーカーとして,および胃潰瘍や肝硬変のマーカーとしての病態情報をもたらすものと考えられている3).
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