検査ファイル
〈項目〉Donath-Landsteiner試験
本多 信治
1
1福島県立医科大学附属病院検査部
pp.240-241
発行日 1990年3月1日
Published Date 1990/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900069
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はじめに
発作性寒冷血色素尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)は,体表が寒冷に曝露された後に起こる激烈な溶血発作が特徴で,血色素を排泄するまれな疾患である.本症は後天性自己免疫性溶血性貧血の病型に入る疾患である.従来は梅毒性のものが多数を占めたが,最近ではPCHの基礎疾患の一つである梅毒が減少したことに伴い,ウイルスなどによる非梅毒性のものが増加しているとされる.梅毒性のものは慢性に経過するのに比較して,非梅毒性のものは軽症であることが多く,ウイルス性疾患の経過中に一過性として現れることが多い.本症の病因はDonath-Landsteiner(以下,DLと略す)溶血素にあるが,この抗体産生の機序については,いまだ一定した見解は得られていない.
DL寒冷溶血素の性状は,IgGクラスの自己抗体で,いわゆる二相性反応を特徴とする.すなわち,低温において自己赤血球と結合し,体温付近では解離する.しかし,解離の際に補体を活性化し,感作された自己赤血球は溶血を起こす.この溶血の機序は,血管内溶血であり,他の自己免疫性溶血性貧血が主に血管外溶血によるのと異なる.また,DL溶血素は,P式血液型特異性を示すことが古くから知られている2).具体的にはP式血液型のうち,P抗原を有するP1型およびP2型の赤血球とよく反応し,P抗原を欠くp型およびPk型の赤血球とは反応しない.
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